生理の正しい理解

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白ロゴ生理の正しい理解のために

◆ 女性の体のリズムを知ろう

自分の体質を知って健康な身体を作り、妊娠しやすいように体調を整えるためには、女性の生理的メカニズムと月経のサイクルを知ることが基本です。
女性の生理は月経出血の開始日を第一日とし、25〜35日(平均28日前後)かけて、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4期を1周期として巡回しています。

◆ 月経周期は4期に分けられる 〜月経期・卵胞期・排卵期・黄体期〜

月経サイクル

◆ 体内の生理的変化と月経サイクル

月経期になると、脳の視床下部は脳下垂体に卵胞刺激ホルモンを分泌させます。この作用により、卵巣内では数個の原始卵胞が発育し始め、月経が終わるころには、1個の卵胞のみが成長して卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌し始めます。卵胞ホルモンは血液によって卵巣から子宮に運ばれ、月経ではがれ落ちた子宮内膜の再生・増殖を促進します。(これが卵胞期で1週間〜10日間続きます。)

卵胞が完全に成熟すると、分泌される卵胞ホルモンは急激に増加します。脳の視床下部は血液の流れによってこのことを察知し、脳下垂体に大量の黄体化ホルモンを分泌させます(LHサージ)。この時期が排卵期です。
この作用により、卵胞は卵子を排卵して黄体に変わります。この時期に排卵された卵子に精子が受精すると受精卵となります。

黄体から分泌される黄体ホルモン(ポロゲステロン)は、子宮内膜にある分泌腺の働きを活発にして、栄養素にとんだ分泌液(子宮ミルク)を蓄え、受精卵の着床・養育に備える態勢をとらせます。(これが黄体期で約2週間です。)排卵から7〜11日の内に受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠です。着床しなかった場合は、排卵から約14日で月経がおこります。

脳の視床下部は日内リズムや感情の変化に合わせ、自律神経を通じて内蔵機能の調節もしていますので、不規則な生活や感情を無理に抑えたり、高ぶらせたりすることは、ホルモンの分泌に悪い影響を与えます。

漢方では卵胞期に重点的に陰(血液と栄養素・水分などの物質面)を補う滋陰薬(じいんやく)を用います。滋陰薬は月経にともなう血液不足の回復を早め、末梢血管に流れる血液の量を増やして、栄養素の不足を防ぎ、卵胞の発育と子宮内膜の増殖をささえ、次にくる排卵期と黄体期に備えホルモン分泌のためにも良好な条件を整えます。
また、精神的ストレスや冷えによる自律神経の失調、子宮筋肉の無用な収縮、血行障害にともなう月経不順・月経痛を起こしやすい体質を改善します。

月経イメージ1
【まとめ】
●月経期=役割を終えた粘膜層と経血をきれいに排出
●卵胞期=子宮内膜の再生と増殖をする
●排卵期=卵胞が卵子を排卵して黄体に変化
●黄体期=栄養素に富んだ分泌液(子宮ミルク)を蓄え受精卵を着床・養育できる態勢を整える

白ロゴ月経期は子宮内膜再生のため

◆ 女性の体のリズムを知ろう

月経期は女性の生理周期における子宮内膜が再生する過程の前段階です。卵巣で原始卵胞が発育し始めるのと同時に月経が始まります。つまり、新しい1個の卵子を迎えるための子宮の新しい環境作り、基盤整備の過程ですから、おろそかにせず、順調に進むように配慮することが何よりも必要です。

月経期には、子宮内膜の血管が収縮して血液の供給が止められることで、すでにその役割を終えたほとんどの粘膜層ははがれ落ち、その中に残されていた血液とともに溶けた状態になって、外に出されます。役割を終えたとはいえ、ある程度の量の組織と血液が失われますから、全身の栄養状態と体力は低下します。日常生活での配慮として、月経期には、心身の負担になるような激しい労働やスポーツなどはひかえたほうがいいでしょう。
また、強い寒さや冷えに体や手足を直接さらすことや、冷たい食べ物や飲みのもをとらぬように気をつけましょう。
さらに膣内は酸性ではなくなりますから、細菌やウイルスの子宮頚管内への進入は容易になります。
この時期、子宮内膜は基底層がむき出しになるなど、女性器全体の防衛態勢が手薄になっています。
月経血の中の白血球がその役割を補っていますが、免疫系全体に負担がかかる時期なので、体を清潔にし、ストレス、過労や暴飲暴食などをさけ、摂生に心掛け、病原体の進入を招かないようにしましょう。

卵
【まとめ】
●月経期は新しい1個の卵子を迎えるための基盤整備の過程
●月経期は女性器全体の防衛体制が手薄になるから病原体の進入に気をつけて

白ロゴ月経痛の原因は血の滞り

◆ 月経痛は「血瘀(けつお)」からおこっている

月経痛は月経前、または月経期の下腹部・脇腹部・腰部の痛みをいいます。現代医学では、ひどい月経痛は月経困難症として治療の対象としています。
月経困難症は、月経血に塊(かたまり)が残る場合(膜様月経困難症)含めた機能性のものと、子宮筋腫や子宮内膜症を原因とする器質性のものとに 分けられます。機能性のものは10〜30歳代、品質性のものは20〜40歳代に多いことが知られています。
しかし、両者の関連性ははっきりしていません。そのため西洋医学では別々のものとして扱われ、器質性のものの治療に重点がおかれています。漢方では、これらを血瘀(けつお:血の滞り)から説明しています。
「血瘀」によって、月経前または月経中の下腹部・側腹部・腰部の痛み、月経中の塊(かたまり)、月経血がすっきり出ない、月経血が黒ずむ、不正出血、月経の遅れ、無月経などを起こし、これを放っておけば、腹部の腫瘤(しこり)、圧痛、ひきつりを起こすもとになります。このしこりには 、うっ血にともなう結合組織の増殖から、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などまで含まれています。
つまり、機能性月経痛の原因となっている「血瘀」を放っておくと、しこりを作る器質性の疾患へ発展していくと漢方では考えています。

月経イメージ3
【血瘀(けつお)の三大症状】
●痛む
●しこり
●黒ずむ

「痛む」「しこる」「黒ずむ」を「血於:けつお」の三大症状といいます。
この血瘀を改善する漢方薬が活血薬です。
月経痛、生理不順や子宮筋腫、子宮内膜症などのほかに、足腰の冷え、肩こり、冷え・のぼせ、
足の静脈の怒張、舌が紫暗色、舌に黒い斑点、顔が黒ずむ、色素沈着などの症状があったら、
多少血行が悪いだけだとは安易に思わないで、治療と予防のために活血薬を服用するとよいでしょう。
*通常、活血薬は貧血の有無や、体の状態に応じて加減するほうが効果的なため、
漢方相談の上、処方と分量を決めてゆきます。

白ロゴ女性の生理と感情

◆ ホルモン系と自律神経系によるコントロール

女性生理における卵巣と子宮内膜の周期変化は、生殖、妊娠、出産という機能を果たす為に必要な過程で、本来、一定のリズムに従って維持されています。このリズムをコントロールしているのが脳の視床下部で、ホルモン分泌系と自律神経系を通じて規則正しい周期変化を起こしています。
視床下部は広い意味で生命維持・自己保存の本能的な生理現象の全般をコントロールする中枢です。生理の各過程ごとに規則的なリズムをとる一方、外からの刺激や情報にも敏感に対応しています。
知覚神経を通して大脳皮質に集められた視覚・聴覚・触覚などの情報は、その内側にある大脳辺縁系へと送られ、そこで蓄積されている、記憶・認識 と照らし合わせて、すぐに意味づけされ、各種の感情(快・不快・好き・嫌い・喜び・怒り、楽しい・悲しい、満足感、焦り、安心、恐怖、愛・嫉妬 など)や欲求・衝動(意欲、食欲、性欲など)が生まれます。その中心に位置する視床下部はホルモン分泌系と自律神経系を通じて、その感情や欲求 にともなう行動に適した身体の態勢を整えています。
自分の感情や欲求のままに行動することを抑え続けたり、悪い感情を起こす体験ばかりが続いたりすると、視床下部が対応しきれなくなって、内臓の機能を失調させ、女性生理のリズムをコントロールする機能にも悪い影響がでてきます。月経周期が乱れたり、排卵までの過程が順調に進まなかったり、着床の準備が不十分になったりします。
逆に、ホルモン分泌系と自律神経系のアンバランスから感情や体調の乱れを生むこともあります。 漢方では、この分泌系と自律神経系の両方に働き、気の流れを良くする理気薬(りきやく)を使って、女性生理のリズムを整えます。

白ロゴ女性の生理と栄養

◆ 消化器系の大事な役割

胃薬を中心とした消化器系が活発に働いて飲食物がよく消化され、栄養素が効率よく吸収されることは、人としての活動を維持する為の絶対条件です。女性生理の生殖、神経、ホルモン、血液循環などの器官系についても同様です。
しかし、あまりにも当然すぎるためか、また生理機能への過信もあってか、このことはむしろ軽視されがちです。
実際に、栄養素の吸収が制限されれば、各器官系への栄養の供給は悪くなり、その役割を果たす力が弱まり、衰えてきます。
月経血の色が薄い、量が少ない、月経期が短い、遅れる、だらだら長引く、時期が狂い反復して出血する、高温期への移行がゆるやかなど、女性生理の器官系に関しても、不足と弱まりが見つかります。この状態のときに漢方では気を補う補気薬(ほきやく)を用います。補気薬は消化器系の働きを 活発にして、全身の組織の栄養状態と体力を改善し、女性生理の器官系を健全な状態に回復させます。
女性生理の器官系には、卵巣と子宮を中心とした生殖系、これをコントロールするホルモン分泌・自律神経、血液の流れる環境系などが含まれます。 補気薬は、筋肉、粘膜、血液などを構成する細胞・組織でのエネルギーと物質の代謝を改善することで、子宮や血管の構造と運動をささえる筋肉の緊 張性を高め、血管と血流をしっかりさせ、無用な出血を防ぎます。また、卵巣と子宮内膜の周期変化を力強く進めてゆく働きがあります。

白ロゴ生理にともなう心身の変化

◆受精を準備する本能

女性生理の器官系は、各部の巧みな連携と共同によって、初潮から閉経までおよそ400回、25〜35日の一定期間で、妊娠を準備するプロセスを繰り返しています。このプロセスには月経のほか、それぞれの期間に女性特有の生理的な現象がともなっています。
月経期(3〜7日間)から始まる約2週間の周期前半(月経期と卵胞期)は、卵子とその着床環境を新たに準備しなおす段階です。
これに呼応して受精の準備を促進する意味で、本能的な感情・欲求は月経終了後に高まるリズムに設定されています。
また排卵が近づくと、卵管まで精子の侵入を受け入れる目的で、子宮の入り口をふさいでいた粘液の粘り気を低下させ、その量を増やします。帯下(おりもの)がおこる原因です。
その後の周期後半(排卵期と黄体期)には、受精卵の着床・養育に備えるため、子宮内膜に再生された分泌腺が活動を開始します。これを助けるため 全身の代謝が高められ、体温が0.3〜0.5℃上昇します。
月経前の1週間ほどはときにホルモン分泌・自律神経の調節・抑制がきかず、いらいら、ゆううつ、不安、不眠、のぼせ、めまい、乳房の張り、胃腸 の不調、むくみ、頭痛、肩こりなど、心と体の両面に不調を起こすことがありますが、ふつうは月経の開始とともになくなります。 このような心と体の変化は、症状として軽く、本来の正しい時期に起こるかぎり心配はありません。むしろ各過程が順調に進んでいる証拠だと自信を もてばよいでしょう。
しかし、症状が重く不快感が強いとき、起こる時期が違うとき、帯下が多かったり臭いがあるとき、月経痛・月経不順・不正な出血があるとき、感情 ・欲求がコントロールできないときは、放置すべきではありません。漢方には、それぞれの症状にきめ細かに対処し、正常化する方法があります。

白ロゴ記事監修

猪越英明

猪越 英明(Hideaki Ikoshi)

  • ・元 東京薬科大学薬学部
      中国医学研究室 准教授
  • ・医学博士
  • ・薬剤師
猪越洋平

猪越 洋平(Yohei Ikoshi)

  • ・鍼灸師
  • ・按摩マッサージ指圧師
  • ・国際中医専門員
  • ・中医手技療法士
  • ・医薬品登録販売者
  • ・元NHK学園 漢方・経絡講座講師