高プロラクチン血症とは?
高プロラクチン血症ってどんな病気なの?
プロラクチンとは脳下垂体という脳の一部位から分泌されるホルモンのひとつで、乳腺刺激ホルモンとも呼ばれ、通常は妊娠〜分娩後授乳期間中に乳腺を刺激して乳汁の分泌を促し、又、排卵を抑えるように働きます。
このホルモンの分泌が、妊娠していないときも異常に亢進して、無月経、無排卵月経、乳汁分泌、(男性では、精力低下、女性化乳房)などを起こすものを高プロラクチン血症というのです。
妊娠・分娩後でなければプロラクチンの血中濃度の正常値はおよそ15ng/ml以下となっていますが、高プロラクチン血症ではこれが異常に高い値を示します。
ホルモンってなんですか?
ホルモンはカラダのいろんなバランスをコントロールしているものです。
例えば膵臓からでて血糖値をコントロールするインスリンや卵巣から出る女性ホルモン、精巣から出る男性ホルモン、副腎から出る副腎ホルモン、甲状腺から出る甲状腺ホルモンなどがあります。
これらのホルモンの司令塔にあたるのが脳下垂体なのです。
高プロラクチン血症の原因はなんですか?
- 1.薬剤性高プロラクチン血症
- 通常、プロラクチンは、ドパミンにより抑制されているため、ドパミン受容体を遮断する薬の常用によって起こることがあります。抗精神病薬,胃潰瘍治療薬(主にドグマチール)、降圧剤、経口避妊薬等です。
- 治療:上記のような薬剤を常用している場合、カウンセリングを行いながら徐々に漢方薬で精神的な症状等を緩和し、炒った麦芽を併用します。
- 2.下垂体腫瘍に起因するもの(プロラクチノーマ)
(プロラクチン値100ng/ml以上) - 下垂体腫瘍は通常は良性腫瘍です。問題は腫瘍の大きさと、ホルモンを生産するかしないかです。
ほとんどの腫瘍はホルモンのバランス障害を起こすため、無月経や月経不順、無排卵などの症状を起こします。
自覚症状としては頭痛、吐き気、めまい、腫瘍が大きくなると、視神経を圧迫して視野の狭窄が起こり、更に大きくなると命にかかわるのです。 - 治療:病院での治療が主です。脳外科における画像診断(脳CT・MRI)〜手術〜経過を見ながら、漢方薬を併用します。
- 3.分娩・妊娠に起因するもの
- 分娩で分泌亢進し以後下がらない場合や、流産、人工中絶後など。
- 漢方では、主に血液を補うもので体力を戻すためのものが用いられます。
- 4.原因不明のもの
- 原因がはっきりしない場合も多いです。日常生活におけるストレスや生活の乱れ、寝不足等によりホルモンバランスが崩れために起こるのではないかと言われています。
- 月経が乱れるため、月経不順を改善する漢方薬を服用します。
上記以外にも様々なものがあり、複数の症状があらわれることもあります。
(症状は人によって様々です。)
潜在性高プロラクチン血症ってどんな病気なの?
普段はプロラクチンの値が正常値の人でも、強いストレスが続いた時や、夜間、黄体期の場合などに数値が高くなることもあります。この潜在性高プロラクチン血症でも排卵が遅れたりする事があります。
TRHテストというホルモン負荷検査で診断することができます。
漢方的な治療法は、高プロラクチン血症と同じです。
病院ではどんな治療するの?
西洋医学的な治療は、脳下垂体腫瘍を除くとパーロデル等の新薬を用いてプロラクチンの値を下げ治療します。
ただし、吐気や嘔吐、めまい、頭痛、便秘、胃腸障害、不眠症等の副作用が強く、長くは続けられない患者さんが多いのも確かです。このようなことから、漢方治療の併用や移行は効果的といえるのです。
- 病院での薬物治療
- パーロデル(メシル酸プロモクリプチン) 副作用:強い吐き気
- カバサール(カベルゴリン) 副作用:吐き気
- プロラクチン値(血清中の正常値)
- 女性:通常値 3〜 15ng/ml 妊娠中 10〜209ng/ml
- 男性:通常時 2〜 18ng/ml
高プロラクチン血症の胸の張りに麦芽(ばくが)
麦芽(ばくが)は、消化を助ける生薬の一つですが、胸の張りが強い時にも用いられます。同様に乳腺が刺激される高プロラクチン血症の胸の張りにも用いられます。
記事監修
猪越 洋平(Yohei Ikoshi)
- ・鍼灸師
- ・按摩マッサージ指圧師
- ・国際中医専門員
- ・中医手技療法士
- ・医薬品登録販売者
- ・元NHK学園 漢方・経絡講座講師
使われる漢方
◆ 月経不順に用いられる漢方
- 婦宝当帰膠B(ふほうとうきこう)
効能・効果
冷え症、貧血、生理不順、生理痛、腰痛、腹痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴り
- 逍遙顆粒(しょうようかりゅう)
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効能・効果
冷え症,虚弱体質,月経不順,月経困難,更年期障害,血の道症,不眠症,神経症
※ 血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
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効能・効果
体質虚弱な婦人で、肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘傾向のある次の諸症:冷え性、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道証。
- 芎帰調血飲第一加減
(きゅうきちょうけついんだいいちかげん) -
効能・効果
血の道症、産後の体力低下、月経不順
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 効能・効果
のぼせ症で、血色はよく、下眼ケンが充血し、頭痛、肩こり、めまいなどがあって冷えを伴い、左下腹部に充実した抵抗、圧痛を認めるものの次の諸症:
月経不順による諸種の障害、月経痛、月経困難、帯下、更年期障害、痔疾