東西薬局 > むくみと漢方薬
むくみ(浮腫)について
◎むくみの原因は?
むくみの原因は、非常に多岐にわたます。
むくみ(浮腫)とは、何らかの原因で細胞間液(血中では血漿)が、血液中に戻れなくなっている状態です。
体外から吸収された水分は、動脈内を血液によって運ばれ、細胞に入ります。細胞に使われた後の水分は、静脈に戻り、肝臓や腎臓に運ばれ、胆汁や尿として排泄されます。また細胞内に取り込まれた水分は必要に応じて、汗として体外に出ます。
これらの機能にトラブルを起こす要因には、疲労、栄養の過不足、運動不足、腎臓・心臓・肝臓などの障害、ホルモン代謝、月経や妊娠、薬やサプリメントの影響などがあります。
心臓にトラブルがある等、血流が悪い状態では水分が細胞に留まることで、むくみます。簡単な例を挙げると、立ち仕事などで1日中、立っているような方では、下肢の静脈が重力に逆らって血液を押し上げる力が、夕方には疲れてきて弱くなり、足がむくんできます。座っている時間が長い方でも、膝や足の付け根の血管がまがっている時間が長い為、静脈の血流が悪くなり、下肢に水分が留まってむくみます。
次に血液の不足やアルブミン(たんぱく質の1種)が少ないと血液に水分を保持する力や引き寄せる力が弱いため、細胞側へ水分が多くなり、むくみになります。
アルコールの飲み過ぎのむくみは、血管が広がるため血管から細胞へ水分が移動するためです。
水分の摂り過ぎで排泄しきれない場合や腎臓・肝臓などのトラブルで、水分の排泄がうまくいかない場合もむくみます。
むくみを漢方(中医学)で考える
◎水分を摂りこみ、流れを作る『脾』
漢方では、『脾(ひ)』と呼ばれる臓腑が、飲食から摂った栄養や水分を『運化(うんか)』という働きで体内に摂りこみ、次に出てくる肺へ運んでいます。この働きが低下すると『水滞(すいたい)』といって、水分が滞った状態が起こります。これがむくみの原因の一つと考えられます。
漢方薬は『五苓散(ごれいさん)』などが用いられます。
◎水分を全身へ配る『肺』
漢方での『肺(はい)』は、水分を身体の内から外へ配布する働きがあります。全身で使われたあとの水分や過剰な水分は、肺の働きで膀胱へ運び、腎の働きで膀胱に尿として溜まり排泄されます。
また体表に運ばれた水分は、皮膚の潤いを保ったり、汗として体外に出たりします。肺の機能が低下すると汗が出なくなったり、尿量の減少が起こり、水分が停滞して、むくむと考えられています。
漢方薬は『防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)』などが用いられます。
◎水分バランスを整える『腎』
漢方の『腎(じん)』は、全身の水分バランスを整える働きをしています。過剰な水分は尿として膀胱に蓄え、排泄します。また不足している場合は、脾や肺に働きかけ、口や咽喉の渇きと言った、水分を要求する生理反応を起こします。この腎の機能がうまくいかないと尿の排泄がうまくいかず、むくみの原因となります。
漢方薬は『牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)』や『八味地黄丸(はちみじおうがん)』などが用いられます。
◎水分の運搬に関わる『心』『血』
漢方でも西洋医学と同様に水分の運搬には血流が関わっています。『心(しん)』は、心臓の働きを担い血液を全身に送り出します。心の働きが弱くなると、血流が悪くなるのと共に水分の流れも悪くなり、むくみになります。また『血(けつ)』と呼ばれる血液の性状を含む物質の不足では、血流が良くても流れる量が少ないため、水分を運べる量も減り、全身に留まってしまいます。このためむくみになります。
漢方薬は、血流を整えるものや、心臓の働きを強めるものが用いられます。また血液を補いながら、水はけを良くする『当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)』なども用いられます。
日常のむくみケア
◎ワンポイントアドバイス
脾の異常は手足の指やまぶたに、腎の異常は顔面に、心の異常は足にむくみが出やすい傾向にあります。
ストレスや心労、冷房の中で冷えすぎているときなどがあると、交感神経の過緊張が血管収縮を起こし、血液の流れも悪くなりむくみが出ることも・・・。
むくみは単独よりは、これらが複合して原因となる場合が多いものです。むくみは、体の不具合メッセージです。薬局の対応範囲を超えているケースもありますので、なかなか改善できない場合は、ちゃんと医療機関も受診しましょう。
むくみをおこさないようにする食事のヒント
胃腸の働きを健全な状態にしましょう。そうすれば、よい血液をつくる材料や、代謝に不可欠なミネラル分もスムーズに摂取できます。それが、水分の移動を楽にさせるのです。野菜類、海藻類、小魚、貝類を取り入れましょう。塩分は、精製塩や化学調味料ではない天然塩を適度に摂取しましょう。自然のかたちで微量ミネラルも含まれている物が好ましいです。
胡麻、木の実などは、細胞や組織の強化に役立ち、だぶついている水分を追い出すようにしてくれます。細胞膜が強くなると、細胞内へ水分が過剰に侵入するのを防げるためです。
腸内環境を整えて血液浄化と老廃物の排除も促進させましょう。
体を動かして、血液が滞らないようにさせることも大切ですね。
記事監修
片桐 宏之(Hiroyuki Katagiri)
- ・薬剤師
むくみに使われる漢方
◆ 排尿の働きを整える漢方
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
効能・効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ
- 五苓散(ごれいさん)
- 効能・効果
体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
ご相談・お問い合わせはこちら
180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-35-14
吉祥寺七井ビル1階 F-4
0422-29-1082
10:00~13:00 / 15:00~18:00
(最終受付 17:00)
定休日 水・日・祝日
180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-35-14
吉祥寺七井ビル1階 F-4
0422-29-1082
10:00~13:00 / 15:00~18:00
定休日 水・日・祝日