多嚢胞性卵巣症候群(PCOS,PCO)
◆ 多嚢胞性卵巣症候群
(polycystic ovary syndrome)とは
通常では、1周期につき1つの卵細胞が成熟して排卵されます。卵細胞は卵胞という袋に包まれていて、卵細胞の成長と共に成長していき、ある程度の大きさになると破裂して、排卵となります。多嚢胞性卵巣症候群では、卵巣内に卵胞が複数できてしまい、ある程度の大きさまで成長するのですが、卵巣の壁についてしまい卵胞の膜が厚くなるため、排卵しにくくなります。
多嚢胞性卵巣症候群の原因
◆ 原因はホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの異常が原因と言われています。
LH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が卵巣に働き、1つの卵胞が成長していきますが、多嚢胞性卵巣症候群では、LHの分泌量が多く、FSHとのバランスか崩れることで、メインで成長する卵胞以外の卵胞も成長してしまい、メインの卵胞の成長が遅れ、排卵が遅れます。排卵がおこらないと、LHの分泌量がさらに増えるため、ますます排卵が起こりにくなります。男性ホルモンやインスリンの分泌量が多いと、LHの分泌量が増えると言われています。
多嚢胞性卵巣症候群の症状
◆ 症状は月経周期の乱れ
多嚢胞性卵巣症候群の症状で多いのは、月経周期が長くなる、無月経、多毛や低音声などの男性化、月経過多や月経の出血が止まらない、不正出血などです。卵細胞が成長する卵胞期(低温期)が特に長くなり、周期が35日以上になることが多いです。
漢方(中医学)で考える多嚢胞性卵巣症候群
◆ 血の状態と腎の機能を整える
漢方においては血流の悪い瘀血(おけつ)ととらえます。また成長に必要である血の不足(血虚:けっきょ)とも考えられるため、当帰と呼ばれる血を補い血流も良くする生薬が配合された漢方薬を用います。血の状態から月経不順が起こるため、月経不順を改善する婦宝当帰膠Bや当帰芍薬散などが用いられます。
また成長・発育に関わるため腎と言われる臓腑の力不足ともとらえます。いわゆる虚弱体質なので、それに対応する漢方薬を用います。。
記事監修
猪越 英明(Hideaki Ikoshi)
- ・元 東京薬科大学薬学部
中国医学研究室 准教授 - ・医学博士
- ・薬剤師
猪越 洋平(Yohei Ikoshi)
- ・鍼灸師
- ・按摩マッサージ指圧師
- ・国際中医専門員
- ・中医手技療法士
- ・医薬品登録販売者
- ・元NHK学園 漢方・経絡講座講師
使われる漢方薬
◆ 月経不順を整える漢方
- 婦宝当帰膠B(ふほうとうきこう)
効能・効果
冷え症、貧血、生理不順、生理痛、腰痛、腹痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴り
- 当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん) - 効能・効果
比較的体力に乏しく,冷え症又は貧血性傾向があるもの:月経不順,月経異常,月経痛,更年期神経症,産前産後あるいは流産による障害時(貧血,疲労倦怠,めまい,耳鳴り,ヒステリー,浮腫,回復促進など),月経時浮腫,つわり,帯下,各種婦人科系疾患の補助療法,脚気,腺病体質,冷え症,腰痛,坐骨神経痛
◆ 虚弱体質に用いる漢方
- 瓊玉膏(けいぎょくこう)
効能・効果
食欲不振、肉体疲労、虚弱体質、病後の体力低下、胃腸虚弱、血色不良、冷え性、発育期