東西薬局 > 産後と漢方薬
産後ケアの必要性
出産後の女性の身体は、身体的にも精神的にも非常に消耗している状態です。
全身が疲労困憊しているのはもちろん、骨盤も安定していないので腰痛にもなりやすいです。悪露の量や痛み、切開による痛みにも悩まれていることも多いです。
出産による喜びもありますが、子育てに対する不安(特に初産の方)もあります。
授乳やおむつ替え、沐浴など、やることも非常に多いですが、2週間くらいはできるだけ安静にして、回復するために最低でも1か月くらいは休息が必要です。
出産はゴールでなく『子育てのスタート』ですから、体調を整えて今後に備えましょう。
漢方で考える産後の母体
◎気(き)
漢方では、身体を動かすものを『気(き)』と言い、消耗した状態を『気虚(ききょ)』と言います。出産により消耗した身体を休めて、体力を回復しましょう。
気虚の状態が続くと肥立ちが悪くなるだけでなく、悪露が長引いたり、お腹の皮膚が引き締まらない原因にもつながります。
また『気滞(きたい)』といい、ストレスなどで気の流れが滞ることがあります。悪露が長引いたり、不眠やイライラ、胸が張って母乳の分泌が悪くなるようなことが起こります。気分転換することも産後の回復に重要になります。
◎血(けつ)
漢方で血液などを表す血(けつ)の不足を、『血虚(けっきょ)』と言います。出産による出血で消耗するだけなく、母体の回復のため、母乳の材料などで使われ、出産後は不足しがちになります。血が不足するとイライラや不安、不眠など精神的に不安定になります。母乳の不足や産後うつにならないためにも血をしっかりと補いましょう。
また身体に不要な血の滞りを『瘀血(おけつ)』と言います。胎盤の残りなど悪露は、不要はものなので血流を良くして、しっかりと排泄します。悪露をしっかりと排泄することで、子宮が引き締まり、妊娠前の状態に戻りやすくなります。
◎腎虚(じんきょ)
漢方でいう『腎(じん)』は、西洋医学の腎臓の水分調節だけでなく、ホルモンや骨、生殖に関係する機能を担っている場所です。出産前と後で大きく女性ホルモンの分泌量が低下します。このため情緒が不安定になります。腎を補うことでホルモンバランスを整えていきます。また妊娠中に弱くなった骨の強化にも役立ちます。
産後トラブル
産後うつ
産後は出産に対する不安から解消されますが、やることが多く慣れない育児や不安もいっぱいで精神的な疲れも溜まっています。さらに身体的にも気血の不足や滞りがあり、情緒不安定な状態になっています。症状としては、疲労感、イライラ、不眠、動悸など様々です。
身体的に回復すると精神的にも随分、楽になります。周囲の方にサポートしてもらって、身体を休める時間を作ることが効果的。不安なことがあれば、地域の子育てサポートなどに問い合わせしてみると悩みが解消することも!!
漢方薬では、心脾顆粒や逍遙顆粒などを用います。
乳腺炎
疲労やストレス、母乳の飲み残し、甘い物や脂っぽい物の食べすぎなどで、母乳が乳腺で詰まってしまい乳腺炎になることがあります(急性うっ血性乳腺炎)。また授乳のときの傷が菌に感染してしまう化膿性乳腺炎の場合もあります。
乳腺炎は、しこりができたり、かなりの痛みを伴います。母乳が出づらくなるため、うっ血したり、熱をもつこともあります。
予防は、左右のバランスよく母乳をあげること、母乳の飲み残しの無いようにする(残っている様であれば出しきる)、甘い物や脂っこい物を食べすぎない、ブロッコリーやキウイフルーツなど葉酸の多い食材を摂る、休息をしっかりとるなどです。
乳腺炎になってしまったら、牛蒡子(ごぼうし:牛蒡の種)を煎じて飲んだり、炒って食べると良いです。炎症を抑える漢方薬で対応することもできます。
母乳の出が悪い
初産の時は、乳管が開通していないことが多いため、母乳が中々でないことも。この場合は、子供に飲んでもらうことが一番です。
母乳がつくられる量が少ない場合は、血液の不足が考えられます。血液を増やすような食事を摂るようにします。レバーは脂肪分が多いので、摂りすぎると乳腺炎の原因に。摂りすぎないようにしましょう。漢方薬では貧血に用いる婦宝当帰膠などを用います。
悪露が長引く
出産直後から始まる悪露(おろ)。最初は量が多かったり、痛みがあったり大変です。悪露の状態は、子宮の回復の目安になります。約1か月くらいで落ち着きますが、気の不足、気の流れや血流が悪くなっている方では、長引くことが多いです。
そのような方には、逍遥散や芎帰調血飲などの漢方薬を用います。
授乳中に気をつけたい漢方成分
漢方でも母乳に成分が移行するものがあります。摂取量が多くなると赤ちゃんに影響が出ることがあるので、漢方薬を服用前に専門家に相談してください。
下記に一例を挙げておきます。
大黄(だいおう)
便秘薬に多く含まれる生薬。赤ちゃんが下痢をすることがあります。
記事監修
- ・元 東京薬科大学薬学部
中国医学研究室 准教授 - ・医学博士
- ・薬剤師
- ・薬剤師
産後に使われる漢方
◆ 貧血や体力回復に使う漢方
- 婦宝当帰膠B(ふほうとうきこう)
効能・効果
冷え症、貧血、生理不順、生理痛、腰痛、腹痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴り
- 参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
-
効能・効果
虚弱体質、肉体疲労、病後の体力低下、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症
- 心脾顆粒(しんぴかりゅう)
-
効能・効果
貧血、不眠、健忘
- 瓊玉膏(けいぎょくこう)
効能・効果
食欲不振、肉体疲労、虚弱体質、病後の体力低下、胃腸虚弱、血色不良、冷え性、発育期
- 複方霊黄参丸
(ふくほうれいおうさんがん)
次の場合の滋養強壮:
虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症、発育期
◆ 精神を整える漢方
- 逍遙顆粒(しょうようかりゅう)
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効能・効果
冷え症,虚弱体質,月経不順,月経困難,産後,血の道症,不眠症,神経症
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
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効能・効果
体質虚弱な婦人で、肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘傾向のある次の諸症:冷え性、虚弱体質、月経不順、月経困難、産後、血の道証。
- 芎帰調血飲第一加減
(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
効能・効果
血の道症、産後の体力低下、月経不順
お勧めの健康食品
◆ 栄養豊富な牡蠣製剤
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