東西薬局 > 潰瘍性大腸炎と掌蹠膿疱症は親戚のトラブル
西洋医学が解明した『免疫』と中医学の『腎』
◎潰瘍性大腸炎も掌蹠膿疱症も免疫が自分を攻撃する!!
人の体には、外から侵入する細菌などを攻撃して殺す、軍隊のような役目をする免疫細胞があって、体中をパトロールしています。
しかし、どうしたことか、この免疫細胞が自分の体の一部を敵と間違えて攻撃することのよって起こる炎症があります。
たとえば、潰瘍性大腸炎や掌蹠膿疱症などが、多く見られる例です。
現代の主流である西洋医学は、現在のところこうした自己免疫疾患に対して、未だ根本的な解決法を見出してはいないようで、免疫作用自体をおさえる免疫抑制剤などが、治療に用いられているようです。
しかし、こうした免疫の仕組みを、よく解明して来たのは、西洋医学の科学的な力によるものですから、今後の更なる研究の発展が望まれます。
◎免疫系と『腎』の関係
このような事態の中で、約2000年の歴史のある中国の伝統医学である『中医学』では、骨と骨髄に対して「腎は髄を生じ、骨を主(つかさど)り、歯は骨の余り(一部)」と言う認識があります。また腎の力が弱った『腎虚』では、骨や歯が弱く、病気にかかりやすくなるとも言っています。これは、腎や骨髄、歯など一連の骨格系は、五臓(肝、心、脾、肺、腎)のうち『腎』の支配下にあると言う認識です。西洋医学の『腎臓』は、主に尿をつくって、老廃物を体外に排泄する内臓と考えられています。しかし、中国医学では、骨・骨髄そして今日の免疫にも関係している内臓系であると認識していたことが、うかがわれます。
中国医学の免疫疾患への応用
◎自己免疫疾患の治療は、補腎法による体質改善で行う!!
西洋医学が解明して来た、免疫の仕組みと、中国医学の「腎」対する知恵を結合して考えると、“自己免疫疾患の治療は、免疫細胞の製造工程である骨髄の働きを、五臓の腎を補強する「補腎法」によって正常化すればよい”と言う結論に至ります。
そして、実際に補腎薬(五臓の腎の働きを強化する薬剤)を用いることによって、体質改善が可能となったのです。
しかし、このような体質の改善には、どうしても時間がかかります。私たちの経験によると約3年を要しています。
実際には、こうした根本治療法薬と炎症を鎮静する対症療法薬の二系統の薬剤が用いられます。
また潰瘍性大腸炎の場合には、さらに直腸の炎症を鎮静する処方を併用し、掌蹠膿疱症の場合には、手のひらと足の裏の皮膚および鎖骨、胸骨、肋骨、骨盤等の炎症に有効な処方を用います。
一つ問題点は、掌蹠膿疱症の場合には、服薬後、約3カ月間は膿疱が一時的に悪化することがあることです。しかし、この現象は一時的であり、徐々に軽減して行くので、心配は全くありません。
潰瘍性大腸炎では、こうした一時的な悪化現象はほとんどなく、比較的順調に経過することが大半です。一般に、自己免疫疾患の中西医結合療法は、完治に至るまで約3年を要することが多く、病症の性質から、こうした長期療養は止むを得ないものと考えられています。
記事 2014年8月22日 猪越 恭也 薬剤師
記事監修
猪越 恭也 先生(故人)
- ・薬剤師
- ・東京薬科大学附属
社会医療研究所 教授 - ・長春中医薬大学
客員教授 - ・日本中医学会理事
『中医臨床 2013.12 Vol.34-No.4』に
東西薬局の猪越恭也先生の臨床レポートが掲載!!
猪越 恭也 先生(故人)
東京薬科大学附属
社会医療研究所 教授
長春中医薬大学 客員教授
日本中医学会 理事
日本中医薬研究会 顧問
『顔を見れば病気がわかる』(草思社)
『皮膚の病気は内臓でなおす』(草思社)
『顔をみて病気をチェックする本』(PHP研究所)他、多数執筆。
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