東西薬局 > 英明先生の漢方コラム
春のお茶
中医学では春は「木−肝」の季節といいます。
暖かくなって木々が芽吹き、枝葉をのびのびとのばす気持ちのよい時期ですが、なぜか体調を崩す人も多く見られます。
入学、就職など環境の変化がストレスとなっている場合も含めて、不眠症や精神不安、身体が何となくだるい、やる気が出ないなどの不調は、主に自律神経系の働きが乱れていると考えられます。この自律神経と最も深い関係にあるのが中医学で云う「肝」です。つまり、この時期に不快な症状のある人は、肝の働きがうまくいっていない人といえます。(ただし西洋医学の肝臓病ではありません)
肝の働きを高めるためにはいろいろと症状を伺って、その人にあったものを選ぶ必要がありますが、まずは手軽に飲めるお茶としては「ロゼア」(中国名は紅景天)というハーブをおすすめしています。シベリア西部の山岳ツンドラ地帯やチベット山岳地帯という厳しい自然環境に自生する草で、もともと過酷な条件下で作業をする人の体力回復や労働意欲の向上のために飲まれていたようです。ロシアでは60年代くらいから科学的な研究がなされ、環境に対する適応力(アダプトゲン)を高める効果、大脳皮質に作用して神経症・神経衰弱などの改善、向精神薬による副作用を緩和するなどの報告があり、84年には医薬品としても承認されています。
ロシアのアルタイ地方には古くから過労、インポテンツ、貧血、胃腸疾患、神経症などに民間薬として伝わっていて、結婚式で「多くの子宝に恵まれるように」と新郎に送る風習があるそうです。
中国でも血中の酸素濃度を高めることから、高山病の治療をはじめ登山をする人や運動選手などが飲んだり、貧血の治療、脳の活性化により認知症などにも応用されています。
記事監修
猪越 英明(Hideaki Ikoshi)
- ・元 東京薬科大学薬学部
中国医学研究室 准教授 - ・医学博士
- ・薬剤師
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